中学校1年生から高校2年生まで柔道部でした。何とか黒帯(初段)にはなったものの、全然強くありませんでした。練習だけはめちゃめちゃキツかったんですけど。
他人よりも強い腕っ節とがっちりした体に仕立て上げてくれた柔道には感謝しています。
***
『柔道部物語』という柔道部員だったんなら誰でも知っている漫画があります。ちょっとその漫画の紹介というか、その漫画の魅力についてです。
あらすじ
中学時代吹奏楽部だった三五十五は岬商業に入学しても吹奏楽部に入ろうと思っていたが、なぜか見学に行った柔道部の先輩に騙されて柔道部に入部することに決める。ここから天才三五の成長と快進撃、挫折を巧みに描く漫画。
典型的なスポコン漫画ではなく「部活漫画」の金字塔。
多分、それなりにきつい部活にいた人ならだれでも理解できるし共感できることがたくさん盛り込まれている。
作者
作者は小林まこと。新潟県出身で本人も高校時代は柔道部で、自分自身が「こうだったらなぁ~」とか「もっとこうしておけば」というのを描いたのが主人公の三五十五。
代表作は、『1・2の三四郎』とそのシリーズ及び『柔道部物語』。
小林まことが何よりもうまいのは動きの描写。『1・2の三四郎』のプロレスの描写もそうだし『柔道部物語』でも、抜群にうまい動きの描写がいかんなく発揮されています。
抜群の画力と描写
組技系の動きを描かせたら現役の漫画家でもトップクラスでうまいと思います。三五の得意技の背負い投げの描写なんかは、生き生きと巧みに描かれています。
『柔道部物語』 小林まこと
例えば6巻で三五が初期のライバルである樋口を下すシーンなんですが、三五が背負い投げで樋口を腰に乗せてから一回転させている様子がたった一ページの描写で見事に描かれています。このシーンを見ただけで、次のページは一本としか思えないくらいきれいな背負い投げです(実際一本勝ちします)。
『柔道部物語』 小林まこと
4巻の地区大会で三五が何でもない相手に一本勝ちするシーンなんですが、ここで副審が椅子を持って避難します。椅子を持って避難する副審に経験者ならではのリアリティが感じられます。柔道やってた人なら全員「わかる!」とうなずけるくらい、あるあるの光景だけれど、やってなかった人はこんなところ見てない。
こういう描写って、経験者ではないとなかなかできないと思います。
経験者ならではの描写や、技の描写のうまさはこの漫画の大きな魅力です。
経験者なら理解できる合宿
さすがに「セッキョー」のような理不尽なしごきは僕の所属している部活にはありませんでしたが、2巻でみんなで合宿に行った時のような話はよくあります。
僕が中学生時代に所属していた柔道部も練習は相当きつかったのですが、よその学校には本当に鬼のような先生がいます。大体どの県にも〇〇体育大学とか〇〇館大学の柔道部出身で元国体選手とかオリンピック代表一歩手前の先生というのが、必ず一人はいます。
そういう先生はもちろん鬼のように強いです。そして自分が厳しい練習に身を置いてきたので、鬼のように厳しいです。その鬼のような先生が合宿や合同練習を理由に、さらにきつい練習を強いてきます。
本当に吐いてるやつとかいるし、けが人とかも出るし、疲れすぎて寝れないし、食えないし、漫画というフィクションではなくリアルの合宿が描かれています。
合宿中に必ずあるよその学校の生徒との会話は「いつもこんなにきつい練習してるんですか?」というのがお決まりです。よその学校に鬼のような先生がいて「この日ばかりはうちの先生が優しく見える」というのはありがちな話です。
「わかるぅ~」と絶対に同意してしまうこと間違いなしです。
三五十五の成長
高校から柔道を始めた三五は、五十嵐監督や先輩に鍛えられ、ライバルと切磋琢磨し、どんどん成長します。多くの柔道少年や柔道少女が考えるサクセスストーリーを三五は作り上げていきます。作者の小林まことが「もっとこうしておけばなぁ~」と思っていたサクセスストーリーです。
三五は最初から強いわけではなかったし、勝ってばかりではなくて負けるし、挫折もします。それを乗り越えて、成功を築いていく全体のストーリーは本当に魅力的です。
『柔道部物語』 小林まこと
スポーツ漫画で面白くないのは、ありえない練習をしたり、そもそも異常に身体能力が高くて人の1/10くらいの時間で何でも身に着けちゃう天才が主人公だったりして、練習や成長がうまく描かれていないというのがあるんですが、柔道部物語では天才ではあるものの三五の成長や挫折をうまく描いていきます。
運動部に所属していた人なら柔道の経験に関係なく、誰でも共感できてしまうところがある漫画です。是非読んでみてください。
おしまい
柔道部物語 新装版 コミック 1-8巻セット (ヤンマガKCスペシャル)
- 作者: 小林まこと
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/06/23
- メディア: コミック
- この商品を含むブログを見る