不整脈の治療を始めて二ヶ月が経った。大学病院を紹介されて、ビソプロロールフマル酸塩というやたら副作用のきつい薬を処方され、薬にも慣れて二ヶ月経って二度目の外来へ行ってきた。採血、心エコー、診察と、病院内をあちこち梯子して、次回は一月の半ばに来てくださいということで、今日の通院は無事に終わった。
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医者「血液の数値は問題ありません。」
俺「病名ってなんですか?」
医者「心不全です」
医者「Shinjinさんの場合は、痔の手術の事前検査で発見されましたが、発見が早くかなり運がいいです。早い段階で見つかっているので投薬をするのにも入院などが必要なく、時間をかけて段階的に進めていけます。」
医者「今飲んでいる薬(ビソプロロールフマル酸塩)はいきなり量が増やせないので、段階的に増やしていかないといけないです。いきなり量を増やしたりすると心臓がびっくりして大変なことになります。次は前回の倍量で行きます。」
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医者「EFという心臓が送り出している血液の数値があります。Shinjinさんはそれが最初は33%ととても低かったですが、今は38%になっています。機械による誤差はありますがおそらく投薬の効果が出始めています。」
(後で調べたら正常値は55〜80%となっているので、まだまだ低い)
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医者「なんか変わった感じとかしますか?」
俺「不整脈は減った気がします、一分に十五回くらいあったのが七回くらいに減ったと思います。」
医者「どれどれ」〜脈をとる〜「まだまだ不整脈は出ていますね」
俺「あと、朝食後というか、朝の動悸がひどいです。脈が140くらいまでいきます。」
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俺「会社から北海道転勤の話が出ています、転勤していいですか?」
医者「どこに住みますか?」
俺「札幌に住む予定ですが、全道内で出張があります」
医者「札幌に住むのはいいですが、今後の治療や検査でかかれる病院はありますか?」
俺「月に一度は帰ってこれるので、その予定と通院を合わせるので、病院を変えるつもりはありません」
医者「それなら問題はありません」
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俺「いきなり倒れたり、死んだりすることはありますか?」
医者「今は安定しているし、投薬の成果も出始めているので、おそらくすぐに死ぬことはないです。しかし、なにか心臓の別な病気を発症したら予後は非常に悪いと思ってください。」
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俺「この病気は良くなりますか?」
医者「改善はできるかもしれないですが、よくなる可能性は低いです。薬はおそらく一生飲み続けます。」
俺「…」
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医者「今後は原因を探るのに心臓の検査をもう少し進めていきたいですが、まずは投薬治療を進めていきましょう。今日は不整脈の薬と、心臓を守る薬を出しておきます。」
医者「次は一月中頃に来てください」
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ということで、今日の診察は終わった。帰ってしばらくしてから文字に起こして思うのは、自分にとって「心臓が悪い」というのは普通のことになり始めているけれど、おそらく多くの人にとっては重い内容だと思う。思っているよりも自分の身近に死が近づいているのを感じる。
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俺は「手術」というイベントでたまたま見つかって「不整脈次第では手術できない」と言われて色々検査されて「めんどくせぇや、後でいいでしょ」みたいな暇を一切与えられなかったのは、本当に大きかったと思う。考える暇もなく病院の予約が埋まっていって、検査や診察を立て続けに放り込まれたのは、病気の発見を進めるのにすげぇ大きかったと思う。
「自覚症状もないし、後で」って言って、自覚症状出るまで放置してたら、多分手遅れになっていて、そこから治療を始めても、時間をかけたのんびりした治療も何もできなくて、自分がただ弱っていくのを眺めて、人生の残り時間を考えるようなことになっていたかもしれない。
今かかっている心不全外来の医者も、肛門科の医者も、口を揃えて「たまたま早く見つけることができたのは本当に運がいい」と言っている。そういうことなんだと思うようにしている。
次は俺くらいの年齢の人が心不全になってどんくらい生きることができるのか、というのをお医者さんに聞いてみようと思っている。
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終わり