家から歩いて3分のところにあった小児科が少し前に廃業した。地域の人から大変に信頼されていない医師が経営していたため、いつも閑古鳥が鳴いていた。うちはその先生が本当は優しくて子供が好きというのを知っていたので、娘が生まれてから廃業するまでの7年間ずっと通っていた。いつも空いていて、待ち時間なんてほとんどないというのも、大変に気に入っていた。
歩いて15分くらいの、駅前の小児科が最寄りになった。医師は皆愛想の良い若い女医さんばかりで、今まで通っていた小児科の無愛想な老医とは大違いである。しかし、混んでいる。とても混んでいる。
下の子が手足口病に感染したので今日連れて行ったのだが、受付からは「50人待ちです」とかそういう声が聞こえてくる。俺は妻がwebで予約してくれて、その通りの時間に行って20分くらいの待ち時間で診てもらえた。予約がなかったらと思うとゾッとする。
予約の人も飛び込みの人も平等に受付前に並ぶんだけれど、予約のない人がゴネる。ゴネ得を勝ち取ろうとしているのか、ゴネまくる。
「子供が具合悪いって言っているんですよ!」
「熱があるんですよ!」
「確実に診てもらえる時間は何時ですか!?」
「いったいいつ診てもらえるんですか!?」
受付でそういうのをやられると受付が停止して行列が伸びていくだけなのでやめてもらいたいと、うっかり野次りそうになった方だ。野次ることはなくても「あぁ、効率悪そうだなぁ」と思って、後で眺めていた。
受付の女性が「全員平等に診ています」「順番は崩せません」としっかり応えていたのに、大変な好感が持てた。行き当たりばったりでゴネ得を獲得できるほど甘くない。
希望としては廃業した小児科の跡地にもう一度小児科ができてほしい、できれば人気のないひっそりとしたのを望んでいる。どうせどこの小児科に行っても出てくるのは、似たような診断結果で似たような薬だ。
人気のない小児科の隣に耳鼻科があるんだけれど、そこは大繁盛しているので決して立地が悪いとかそういうわけではなかった。マジで先生の人柄だったと思う。
終わり