1990年代末、パソコンはあったもののインターネットへの接続が許されていなかった我が家に、定額制のインターネットが導入されてインターネットに触れることを父親から許された。パソコンはリビングにあったので、親がいない隙を見計らって海外のエッチなサイトにアクセスしてみたりしたのも今は昔である。確か高校2年生の時だったと記憶している。
インターネットではエッチなサイトを見ていただけではなく、英語を勉強しようと思い立った俺は世界中のいろいろな国の人とメールフレンドになることを決めて、当時乱立していたメールフレンドを探すためのサイトを利用してたくさんの人と連絡を取ってみた。SNSとかが出てくるよりももう少しだけ前の話。
何人かとは仲良くなり、手紙のやりとりをしてみたり、誕生日にプレゼントを送ったりしていた。そういうことを初めてから20年も経つのだけれど、今でも仲良くしていて時々連絡を取る人も2人ほど残っている。全員結婚して子供も2〜3人いる。
〜2005年頃の話〜
20歳の夏、当時大学生だった俺はバイトに明け暮れ、1ヶ月に200時間くらいバイトしていた。月の給料が20万とか30万入ってくるんだが、大学へ行ってバイトしてるだけなので、お金は全然減らない。銀行口座には使い道も与えられない金だけがどんどん積み上がっていった。
最初はメールで始まったコミュニケーションもいつの間にか、MSNメッセンジャーへ変わり、Web Camがつくようになった。銀行の口座残高が増えていくのをずっと眺めていた時に「海外へ行けるかな」と思いたち、オランダに住んでいた友人とイギリスに住んでいた友人に連絡し、バイトで貯めた金を使ってオランダとイギリスへ行くことにした。オランダとイギリスを選んだ理由はユーロスターに乗りたかったからと、その二つの国の人が特によく連絡していて仲が良かったから。
2005年に人生で初めて海外へ行った。パスポートをとって、飛行機の切符を買った。香港経由でオランダへ行って、3週間滞在した。その後イギリスへ行って1週間滞在した。インターネットで知り合っただけの友人は実在したし、日本でしか話したことのなかった自分の英語がきちんと外国で通じるのが本当に嬉しかった。毎日天気も良くて本当に楽しかった。
たくさんの日本円をユーロに変えたのだけれど、結局友人家族にほとんど御馳走してもらったのと、金銭感覚もよく掴めなかったのでお金はほとんど残して持ち帰ってきて、ずーっとユーロのままで家に置きっぱなしになっていた。
その後何度も海外へ行ったし、一時期は住んでいたこともあるけれど、インターネットで知り合った友人に会いに行った時のドキドキを超える海外はその後でも一度も体験していない。
SNSが普及してインターネットが閉鎖的になるよりも少しだけ前の、インターネットの話。
はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」