新しく入った会社の先輩から「あの会社は基本的に王様で、取引を行なっていくために会社として体力と人員がかなり必要なのだけれど、うちはそこまではまだ到達していないので、戦略的に付き合わない」という話をされた。業界経験も何もない私から見ても「太い客」の最有力候補だが、そことは取引をしていない。
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前の会社にいる時、機械の不具合を連発して上司がうつ病になりかけ、私が担当を引き継ぐことになった取引先があった。機械の不具合は段々いちゃもんへと進化していき、ついにはメーカーの見解やいうことは全て無視して、議論が平行線をたどり続けたことがあった。
その時に「この会社と付き合っていくのには体力と人員がとられすぎているし、付き合っている従業員も誰も幸せじゃないので、取引を切るべきです」とマネジメントには提言した。今なら「我々がきった」という評判の上で取引を終わらせることができるおまけ付きだ。
マネジメントからは「大切な取引先なんだから、そんなことできない」と話をされ、私の提言は却下された。
最終的には「なぁなぁにしてごまかす」とか「うやむやにしてもみ消す」という私の立てた作戦と、取引先としても機械の扱いに慣れてきたところで不具合が収束していき、事態は一年ほどでことなきを得た。
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それから何年かして、別な担当者が別な機械をその会社に売った。打ち合わせや仕様書は全てなかったことにされ、完成立会いに行った「俺様がルール」の担当者、工場に入れれば工場にいる別な「俺様がルール」になり、思い通りにいかないことは恫喝して何とかするという、会社の本性が露呈された。新担当者も私と同じように「取引を切りましょう」と提言したが、その話はなかったことにされた。
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私が新しく入った会社は「太い客であっても社員が幸せに慣れないのなら取引しない」という選択をしたが、以前いた会社は「社員の幸せよりも売り上げ」という選択をした。会社は売り上げなければ存続できないのだけれど、社員がいないと存続できない。
会社が何に重きを置いているのかというのが、真っ二つに綺麗に分かれたなという事例をなんとなく感じたのでした。私は、売り上げ第一主義よりも、従業員の幸せに重きをおく会社へと転職し、自分の決断は間違えていなかったと思いたいです。
終わり